読みもの
筆作りが始まったのは今から約4000年前の仰韶文化(ぎょうしょうぶんか)の時代(紀元前2500年頃)で、新石器時代末期にも毛筆状の物で描いたと思われる文様があり、筆の様な物が存在していたと言われています。
実際には殷(いん)時代(紀元前17世紀ごろから11世紀半ば)の甲骨片に筆を用いて書かれたと思われる文字が書き残されており、殷時代あるいはそれ以前から筆があったと言われています。
現在確認できる最古の筆は、戦国時代の楚(そ)の遺跡から発見された「長沙筆」(ちょうさふで)で、長さ約16cm・細い管の一端を裂いて、兎の毛を挟み、糸でくくりつけられて、漆(うるし)で固められています。
秦代(しんだい)(紀元前221~前202)には、蒙恬将軍(もうてんしょうぐん)が穂首に一種ではなく数種の毛を用いて筆造りに数々の改良が施されていったそうです。
筆作り技術の発展
その後も技術が洗練されていき、漢代の木簡とともに発見された「居延筆」(きょうえんひつ)は、紀元前75~57年頃作られて筆で、毛の種類ははっきりとはわかりませんが、筆としてかなり完成した姿をしていて、現在の筆に近かったと思われます。
こんな昔から言葉を伝えるために、文字を書くための道具として筆が作られ、使われてきたなんて驚きですよね。
日本における筆の歴史
日本でも、仏教が盛んになった奈良時代に仏の教えが書かれた本を書き写す「写経」が広まったことにより、筆の需要が高くなり全国13か国で筆作りが行われたそうです。
その後、平安時代に入り筆の生産は増え全国28か国で作られるようになり、書の名人でも知られる「空海」が、当時の最新技法を中国から持ち帰り、筆匠に伝えて筆を作らせ、朝廷に献上したそうです。
江戸時代には、教育が一般にまで広く普及したことにより、読み書きをするのに筆が不可欠な物になる一方、上流階級の人達が使う高級筆の製作は専門の筆師があたり、極めて高い技術を競い合っていたそうです。この頃さらに多くの動物の毛が使われるようになって行きました。
明治時代に入り、東京・京都・奈良・豊橋・川尻・熊野などで、専門業者が近代企業として生まれ変わったり、新しく誕生していき、さらに多くの人へ普及していったそうです。
約4000年という想像も出来ないような昔々に、皆さん誰しも一度は使ったことがある筆の原型が誕生していたなんて驚きです。個性を出したり記録を残したりする道具として、今も昔も変わらず私たちの身近なところにある大切な道具なのです。
しかし、西洋文化が日本にやってくると、ペンや印刷と言った新たな技術が台頭し、以前ほどの筆の需要がなくなってしまいます。 供給する側の職人は徐々に減りはじめました。
1972年(昭和47年)頃の日本では、筆記用具が増え、筆と墨で文字を書くことが少なくなり、筆文字が苦手な人が続出していたようです。そんなとき最初の筆ペンが発売されました。
毛筆の良さを生かした穂先が特徴で、軸に内蔵されたインクが穂先に流れ出る仕組みは、これまでになかったものでした。
1975年(昭和50年)には使い易さの人気に乗じて多くのメーカーが大量生産を始め、筆ペンは一般的な筆記具として定着。市場では更に普及していきました。日本文化である、筆で書くこと~筆らしく書く~ための開発が伝わっていったのですね。
多様化する筆ペン
今では、書くための筆ペンだけではなく、水彩画などでも使えるカラー筆ペンも登場し、多様化が進んでいます。鴻月でも奈良で300年以上続く老舗筆メーカーあかしやさんの筆ペンを取り扱っています。
1度使えばその抜群の書き心地に、これ以外に考えられないという方も少なくありません。心を落ち着けて、筆ペンを握り、大切な人にお手紙を書いてみてはいかが
でしょうか?自分自身とも向き合える素敵な時間になるでしょう。
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これからだと年賀状を書くのに使っても良いかもしれませんね。最後までご覧いただきありがとうございました。