作り手
茶道に馴染みのない方でも1度は見たことがある茶筌(または茶筅)。茶道において抹茶を点てるのに使う茶道具の1つで、ほとんどが竹から作られています。 奈良県の北西に位置する高山は、室町時代から続く茶筌の一大産地。この地で、今日に至るまで茶筌一筋の竹茗堂堂主は、昭和62年(1987年)通産大臣より伝統工芸士の認定、平成11年(1999年)には「伝統産業功労」により通産大臣より表彰されました。このような輝かしい功績を持つ竹茗堂左文堂主 久保左文先生にお話を伺いました。
作り手 | 『竹茗堂』 |
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お話を伺った方 | 久保 左文さん |
お取り扱い商品 |
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紆余曲折の茶筌の変遷
1970年代の高度経済成長期では、花嫁修行の一環だった茶道はバブル崩壊後、需要がなくなり衰退。リーマンショックなど厳しい状況を切り抜け、5年ほど前の世界での抹茶ブームで息を吹き返します。しかし今回の新型コロナでその勢いに歯止めがかかります。
輝かしい功績
しかしながら、竹茗堂左文の茶筌はそのような厳しい状況下であっても世界からこのような高い評価を受ける茶筌として国内外に知られていました。
ー出展などー
2008年パリ「ルーヴル宮装飾美術館」出展
2014年パリ「ジャパンエキスポ2014」出展
2015年ニューヨーク「NY NOW 2015」にて制作実演など
2015年ニューヨーク国連大使公邸にて製作実演
2019年ロンドン「ジャパンハウス」出展
ー表彰ー
1995年奈良県知事表彰
1999年通商産業大臣表彰
2009年中小企業長官表彰「ものづくり元気企業300社」
2015年近畿経産局「ものづくり新撰2014」選定
2015年秋の叙勲で「旭日小授賞」(産業振興功労)授賞
他とは違う
なぜここまで高い評価を受けるのか?それは竹茗堂左文の茶筌が持つ2つの美によるものです。1つはその造形美に感動される方が多いです。材料の竹の加工に数年必要で、制作においても1人前の茶筌が作れるようになるまで最低10年はかかるそうです。
その中でも「味削り」と呼ばれる工程は、茶筌づくりで最も大切な工程です。茶筌の先端の竹を削りながらしなりを作り、弾力を生み出します。ここの加減で点てたお茶の味や茶筌の耐久性が決まるので、作り手それぞれの個性が反映される最も神経を使う工程でもあります。
そんな手間暇かけて完成した国指定の伝統的工芸品は「腕が良くなったと思わせてくれる」というお声もあり、機能美も兼ね備えています。
お客様のこんなエピソードも
竹茗堂左文の茶筌をお使いのある方は、お子様にお茶を点てて飲ませてあげたところ「おいしい」と飲み干したそうです。このようにあなたが真心込めて作った1杯は、身近な誰かの特別な1杯になるかもしれません。大切な人をお茶を通して想う、そんな心豊かな時間をお楽しみ下さい。
作り手の願い
制作においては「基本に忠実に」を心掛けておられる久保先生は、歴史や伝統を大切にしながらもお茶の文化の普及に精力的です。
茶道は馴染みのない方も多いので、もっと気軽に使っていただける、お茶が身近になる商品が必要という発想から生まれたのが鴻月でもお取り扱いさせていただく柄が長い「茶筌マドラー」です。カフェラテのミルクやココアを点てたり、様々なシーンで使えます。
茶道人口がピーク時の3分の1以下となってしまった今、しきたりやルールに縛られず気軽な気持ちで茶道具を使っていただきたいという想いが込められています。
海外の抹茶ブームはまだ続いているため、それをチャンスに茶筌を海外に広め、その流行が日本に回帰することを願い、国内の普及と同時に、海外への販路拡大にも取り組んでいきたいと考えているそうです。抹茶をサッと点てて、家族みんなで楽しむ、そんな風に暮らしに溶け込めば、私たちの日々の幸福度は向上するかもしれませんね。